モノクマ 「えー、まずは学級裁判のルールを説明しておきたいと思います。学級裁判の結果は、オマエラの投票によって決定されます。正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき。だけど間違った人物をクロとした場合は……クロ以外の全員がおしおき! クロは退院、自由の身です!」

堤 「多可村を殺した犯人を、話し合いの後、このボタンで投票……するんだな」

由地 「うぉー、この証言台ハイテクやん。無駄に金使うてますやん」

モノクマ 「ちょっと、投票まで触らないでよね! 高い機械はデリケートなんだから!」

的目 「とにかく、議論を始めましょう……多可村くんを殺したのは、誰なのか」

逆巻 「よっしゃ、議論だ! 議論すんぞおおお!!」

長谷部 「そんなの、するまでもないんじゃないの」

的目 「え?」

逆巻 「へ?」

長谷部 「黒田だろ」

黒田 「…………えっ!? ぼ、僕!?」

長谷部 「超高校級の殺し屋で人殺しなんて日常茶飯事の世界で生きてきた黒田圭介なら多可村もさくっと殺しちゃえるんじゃないのっつってんのハイ議論の余地なしさっさと白状すれば黒縁ダサ眼鏡」

黒田 「え、ちょ、え……!?」

抹莉 「まぁ一理あるかもねぇ」

美芝 「や、やはり……黒田さんが……うう、ケホ、ケホッ」

糸依 「え? なに? 黒田が殺したの? 決まり?」

黒田 「ち、違う……!」

相馬 「待てよ。それは黒田の肩書きだけでそう言ってんだろ? 証拠も何もない」

黒田 「相馬くん……!」

長谷部 「証拠なんざ知るか。だけどこいつが一番怪しいって話だよ。警察の捜査もまず人を疑ってかかるもんだろ」

白鷺 「しかし横暴すぎないか? 肩書き以外に、黒田に怪しい点など」

長谷部 「ありまくりだろ。例えば……毒のこととか」




 議論開始 PHASE 01
 (所持するコトダマを、【】内の言葉に発射することで論破できます)


白鷺 「毒のこと……とは?」

長谷部 「捜査が始まったばっかの時だよ。モノクマファイルにも書いてないような毒の種類までぺらぺら説明して、間違いないような口ぶりで
【青酸系の毒物】 だって断言してたけどその言動が怪しいっつってんの」

抹莉 「さすがは超高校級の殺し屋だよねぇ」

鈴木 「でも、スズキたちにとって役に立つ情報だよね。ありがたいじゃん!」

堤 「凶器の情報……それは犯人なら知られたくないことだと思うが、それを言った黒田はむしろ
【犯人ではない】 と言えるんじゃないか?」

長谷部 「逆。毒の知識なんて黒田以外にはてんで無いんだ、いっくらでもねつ造できんだろ。ホントは別の凶器を使ったのに自分の都合がいいように青酸系の毒物だって嘘ついたんじゃないの」

黒田 「う、嘘なんてついてないよ……!」

長谷部 「はぁ? じゃあその証拠もってこいよ多可村がホントにその毒物で死んだっていう証拠を。あー無理だよな青酸系毒物なんて
【発見されてない】 んだから」


相馬(いや……証拠なら、そう、俺が持っているはずだ)






 * (↓二周目で、回答を表示しています)






白鷺 「毒のこと……とは?」

長谷部 「捜査が始まったばっかの時だよ。モノクマファイルにも書いてないような毒の種類までぺらぺら説明して、間違いないような口ぶりで
【青酸系の毒物】 だって断言してたけどその言動が怪しいっつってんの」

抹莉 「さすがは超高校級の殺し屋だよねぇ」

鈴木 「でも、スズキたちにとって役に立つ情報だよね。ありがたいじゃん!」

堤 「凶器の情報……それは犯人なら知られたくないことだと思うが、それを言った黒田はむしろ
【犯人ではない】 と言えるんじゃないか?」

長谷部 「逆。毒の知識なんて黒田以外にはてんで無いんだ、いっくらでもねつ造できんだろ。ホントは別の凶器を使ったのに自分の都合がいいように青酸系の毒物だって嘘ついたんじゃないの」

黒田 「う、嘘なんてついてないよ……!」

長谷部 「はぁ? じゃあその証拠もってこいよ多可村がホントにその毒物で死んだっていう証拠を。あー無理だよな青酸系毒物なんて
【発見されてない】 んだから」


 ←「シアン化水溶酸の瓶」




相馬 「いや違う。黒田の言う青酸系の毒物は、発見されてるんだ、長谷部」

長谷部 「…………あっそ」

逆巻 「軽! 軽いなオマエ!!」

長谷部 「まぁ毒の話がホントだったとしても黒田の怪しさは一ミクロンも変わんないけどね」

抹莉 「負け惜しみですかプギャー」

長谷部 「黙ってくんない貧乳コスプレ女」

抹莉 「おおっと長谷部選手は地雷を踏んだようですにゃ……」

的目 「怪しいっていうなら、あんただってそうじゃないの長谷部」

長谷部 「は?」

的目 「みんなに喧嘩売ってばかりで、仲良くなろうともせず、捜査にも不参加……信用、されてると思ってるの?」

長谷部 「疑いたきゃ勝手にどうぞ、その代わり俺が多可村殺ったっていう完璧な証拠を持ってきてくんない話はそれからだし」


 殺伐とする場に、わざとらしいため息が流れる。


由地 「はぁー……もー、埒あかへんわ。何となく怪しい奴とか人殺しそうな奴の行動挙げ連ねていってもキリないやろ。水かけ論っちゅーヤツやで」

鈴木 「その怪しい奴に、ユジも入ってると思うよ!」

由地 「マジで!?」

白鷺 「それはそうだろう……皆の不安や疑心を煽ることばかり言っていたのは誰だ」

由地 「いやいや、あれは忠告やん! 最悪の想像をしとくことによって、最悪の未来を回避する的なアレやん!」

二ノ瀬 「とりあえず黒田くんも長谷部くんも由地くんも、全員疑わしいと結論付けるとして……」

由地 「二ノ瀬チャン、辛辣!」

黒田 「僕も、なんだね……ぐすっ」

二ノ瀬 「水かけ論だという意見は賛成です。この手法では議論がこれ以上進まないかと思うのですが……皆さんはどうですか」

的目 「そうね、確かに堂々巡りだし…………なら、誰が犯人かは置いておいて、まず、どうやって多可村くんを殺したかを話し合いましょう」

抹莉 「ふむふむ。殺害方法から、それが可能だった人物を絞っていくわけだね」

箱崎 「では、話し合う議題は……犯人は多可村さんに、どうやって毒を摂取させたか……ですね?」

糸依 「えー? そんなの、簡単じゃーん?」




 議論開始 PHASE 02


糸依 「
【多可村が持ってたコーヒー】でしょコーヒー。それっきゃないじゃーん」

白鷺 「コーヒー……」

堤 「そうだな……あの状況ではそれが一番疑わしい……」

逆巻 「
【あの状況】ってのが、さっぱり分かんねー!! ヘルプ!」

箱崎 「多可村さんコーヒーを飲まれていたようなのですが、お体に異常をきたされた際に
【多可村さんがコップを落として割っているんです】。つまり、亡くなる直前まで持っていた【そのコーヒーに毒が混入されていた】のではないでしょうか……」

鈴木 「タカムラがウッってなって、バタッて倒れて、死んじゃったのは、それを飲んだせいなんだね……」

長谷部 「そこに毒を混入できた奴が犯人ってわけね」

白鷺 「…………」


相馬 (あいつの嗅覚を信じるなら……)






 *






糸依 「
【多可村が持ってたコーヒー】でしょコーヒー。それっきゃないじゃーん」

白鷺 「コーヒー……」

堤 「そうだな……あの状況ではそれが一番疑わしい……」

逆巻 「
【あの状況】ってのが、さっぱり分かんねー!! ヘルプ!」

箱崎 「多可村さんコーヒーを飲まれていたようなのですが、お体に異常をきたされた際に
【多可村さんがコップを落として割っているんです】。つまり、亡くなる直前まで持っていた【そのコーヒーに毒が混入されていた】のではないでしょうか……」


 ←「多可村のコーヒー」




相馬 「それは違う。多可村のコーヒーには、何も混入されていなかったんだ。そうだよな佐田」

佐田 「うむ……調香師の肩書きに誓おう、多可村のコップに入っていたコーヒーには、砂糖もミルクも薬品も、一切入っていなかった」

白鷺 「毒は入っていなかった……のか?」

相馬 「ああ、超高校級が誓ってるんだ。間違いないんじゃねぇか? 白鷺……お前が注いだコーヒーに、毒は入っていなかった」

白鷺 「……!」

的目 「多可村くんが自分で入れたんじゃなくて、白鷺さんが注いであげたの?」

白鷺 「……ああ」

由地 「あーやーしーいー……けど、毒もなんも入ってないんやったらシロか」

鈴木 「シラサギなだけに?」

由地 「やめーや! 俺がスベったみたいになるやんけ!」

白鷺 「……そうか。私が……私がコーヒーを勧めたせいで、死んだわけじゃ、なかったんだな……」


 そうか……と呟く白鷺は、安堵しているようにも見え、けれど当の多可村が死んだことに変わりはない現実にか、複雑な表情で俯いた。
 多可村は、白鷺の注いだコーヒーでは死んでいない。
 しかし、疑問は終わらない。


鈴木 「え? じゃあ多可村なんで死んじゃったの?」

白鷺 「あの場にあった、他のものに入っていたのだろうか……料理か、他の飲み物か……」

二ノ瀬 「佐田くんによって薬品の混入が認められた飲み物が、一つだけありました」

白鷺 「! それは……?」

二ノ瀬 「コーヒーです」

美芝 「あら……ですが、ゴホン、多可村くんのコーヒーからは」

二ノ瀬 「長谷部くんの」

美芝 「え?」

白鷺 「な」

長谷部 「……は? 俺の、コーヒー?」

相馬 「ああ、佐田によれば長谷部のコップ……その中のコーヒーから薬品の匂いがしたらしい」

佐田 「うむ。間違いない」

相馬 「ところで……長谷部」

長谷部 「……あ?」

相馬 「飲んだか?」

長谷部 「飲んでねーよ! っていうか薬品ってどう考えても毒だろ飲んでたら俺この世にいるわけねぇっていうか何なんだよそれ!」

相馬 「飲んでないんだな?」

長谷部 「…………ああ。一杯目にジャスミンティ飲んで、二杯目にコーヒー注いで、砂糖入れて……混ぜてる途中で多可村がああなったから飲んでねぇ」


 いつも、何に対しても執着を見せないポーカーフェイスがわずかに崩れる。眉間にしわが寄り、整った顔が歪む。


長谷部 「……飲んでたら死んでたわけ? 俺も多可村みたいに殺されてたってわけかよ?」

佐田 「うむ、おそらくな」

長谷部 「……は……ざっけんなよ、くそ……」

鈴木 「でもでも、変だよね! あべこべだよね! コーヒーに毒の入ってないタカムラが死んで、入ってたハセベが死んでないなんてさ?」

抹莉 「長谷部が多可村に、自分のコーヒーを飲ませたとか……ってそれ何てBL」

長谷部 「……んな気持ち悪いことするわけないだろ」

黒田 「なんであべこべかっていうのも気になるけど、そもそもどういう経緯で長谷部くんのコーヒーにだけ毒が入ってたのかも気になるね……多可村くんと、同じコーヒーサーバから注いでるはずなのに……って、き、気になるの、普通だよね? 普通の男子高校生なら気になるよね!?」

相馬 (あんまりうろたえると、ますます普通に見えなくなってくるんだよな……でも、確かに気になることだ。混入経路が分かれば、多可村が毒を摂取した経路もおのずと見えてくるかもしれないし……)




 議論開始 PHASE 03
 
《 》内の言葉を記憶し、コトダマとして使用できます。


的目 「なんで長谷部のコーヒーにだけ毒が入ってたのか……まぁ、気になるわね」

箱崎 「
《毒の混入経路》……あの、長谷部さんは、何か心当たりがありますか?」

長谷部 「……普通に注いだだけだっての。ジャスミンティ飲んだコップに、サーバからブラック注いで、砂糖溶かして……」

逆巻 「なら
【砂糖】に決まりだ!」

鈴木 「えー? 砂糖なら私も紅茶に入れたよ?」

糸依 「だよね、アタシ混ぜてあげたもん」

黒田 「実は
【スティックシュガー】を使ってたってことは……」

長谷部 「ねーよ。使ったんならスティックシュガーっつってるよ耳塞がってんなら穴開けてやろうか地味ダサ眼鏡」

黒田 「うわああ、ごめんなさい……!!」

鈴木 「鈴木もスティックシュガーじゃなくて砂糖だよ!」

美芝 「あ、あの、それを
【混ぜたスプーン】は、ケホン、関係ありませんわよね」

長谷部 「スプーンくらい他の奴も使ってんだろ」

箱崎 「
【最初からコップに付着していた】というのはどうでしょうか……」

抹莉 「わお、ミステリちっく。でも長谷部は一杯目にジャスミンティ飲んじゃってるよ?」

由地 「どんでん返しで、やっぱり
【コーヒーサーバに入っとった】っちゅー線はないの?」


相馬 (……佐田と二ノ瀬の協力でメモした皆の飲み物……これも合わせて消去方法で考えていくと……賛成できる意見は一つしかない)

 ※賛成できる意見にコトダマを発射してください。






 *






的目 「なんで長谷部のコーヒーにだけ毒が入ってたのか……まぁ、気になるわね」

箱崎 「
《毒の混入経路》……あの、長谷部さんは、何か心当たりがありますか?」

長谷部 「……普通に注いだだけだっての。ジャスミンティ飲んだコップに、サーバからブラック注いで、砂糖溶かして……」

逆巻 「なら
【砂糖】に決まりだ!」

鈴木 「えー? 砂糖なら私も紅茶に入れたよ?」

糸依 「だよね、アタシ混ぜてあげたもん」

黒田 「実は
【スティックシュガー】を使ってたってことは……」

長谷部 「ねーよ。使ったんならスティックシュガーっつってるよ耳塞がってんなら穴開けてやろうか地味ダサ眼鏡」

黒田 「うわああ、ごめんなさい……!!」

鈴木 「鈴木もスティックシュガーじゃなくて砂糖だよ!」

美芝 「あ、あの、それを
【混ぜたスプーン】は、ケホン、関係ありませんわよね」


 ←《毒の混入経路》




相馬 「美芝の意見に賛成だな……俺も、砂糖を混ぜた時に使ったスプーンだと思う。コーヒーサーバに入ってたら全員のコーヒーから薬品の匂いがするはずだ。同じ理由で鈴木が使った砂糖もシロだ。最初からコップに付着していっていうのも長谷部が既に一杯飲んでいる以上その可能性もない。だから……」

長谷部 「はぁ? ちょっと待ってくんない意味分かんないんだけどスプーンだって他の奴も使ってんだろ?」


 それは、俺の同意を切り裂く声だった。


長谷部 「何? スプーンからも薬品の匂いがしたって超高校級の調香師サマが言ってんの?」

佐田 「いや……残念だが私は飲み物しか調べていない。調査不足だったな……」

相馬 「そんなことねぇよ」

長谷部 「あるよ。決定的な証拠がないってことなんだからな」




 長谷部の反論 PHASE 04


長谷部 「佐田が調べていない以上ティースプーンを混入経路だって言い切れる証拠はないねとりあえず自分が間違ってました申し訳ございませんってそこに頭つけて土下座してくんない」

相馬 「だ、誰がするかっ……! 決定的な証拠はねぇけど、言い切れるんだ。ティースプーン以外に考えられる混入経路は無いってな!」

長谷部 「まぁ確かに砂糖は鈴木も入れて飲んでるし、俺はまずジャスミンティ飲んでるから最初からコップに付いてた可能性もない。コーヒーサーバは多可村のコーヒーがシロだった時点で問題外だ。
 だけど、だからってスプーンに決めつけるのは頭悪すぎるんじゃないのこれだから運動部系は脳筋で困るわ」

相馬 「のうきん……!」

長谷部 「
【鈴木だってティースプーンで紅茶混ぜてんの】。スプーンは全部同じコップに刺さってたの。だったら鈴木の紅茶からも薬品が匂わなくちゃおかしいだろハイ反論できるならどーぞセンター分け脳筋バレー部サンああ悪い球拾うしか脳のないリベロだから攻めるのは苦手だっけだったら黙ってレシーブ練習でもしてれば?」

相馬(イラッときた……!! その言葉、ぶった斬らせてもらう!!)






 *






長谷部 「
【鈴木だってティースプーンで紅茶混ぜてんの】。スプーンは全部同じコップに刺さってたの。だったら鈴木の紅茶からも薬品が匂わなくちゃおかしいだろ」


 ←「紅茶」



相馬 「悪いけど、鈴木はティースプーンを使ってないって情報がちゃんとあるんだよ。二ノ瀬が覚えてる。あいつのデータベースに、“鈴木の紅茶を、糸依がケーキのフォークで混ぜた”っていうシーンがちゃんと記憶されてるんだよ」

長谷部 「は……ケーキのフォーク?」

二ノ瀬 「はい、記憶しています。私一人の証言では信用性に欠けるかもしれませんが、佐田くんによる裏付けがあります」

佐田 「うむ。鈴木の紅茶から油脂分を含んだ、生クリームの特有の甘ったるい香りを検出している」

長谷部 「………………あっそ」

抹莉 「プギャー!」

由地 「泣いてもええねんで長谷部クンうひゃひゃひゃ」

長谷部 「黙れよ外野うるさい死ね」

堤 「いや……なぁ、ちょっと待ってくれ。俺は二ノ瀬と佐田が飲み物を調べている時、見張りで傍にいたんだが……他にもスプーンを使った奴がいるんじゃないか?」

相馬 「……え?」

堤 「確か……ああ、抹莉だ。彼女のコーヒーにはミルクが入っていたんじゃなかったか? ミルクを入れたら……スプーンで混ぜるだろ」

白鷺 「抹莉、どうなんだ?」

抹莉 「ぬふふ、どうだったでしょうー」

逆巻 「うおおい! はっきり答えろって、そこ大事だろ!!」

抹莉 「ちょっとしたクイズだよ。ぬふふ、分かるかにゃー? ヒントは、アタシがこうして生きてること! にゃんつって」

相馬 (抹莉がティースプーンを使ったかどうか……ヒントは……抹莉ではなく、彼女のコーヒーが示していたはずだ)


・ミルクは入れたが混ぜていない。
・スプーンで混ぜたが飲んでいない。
・毒を飲んでも平気な体質

 (正しいと思われるものを選んでください)






 *






・ミルクは入れたが混ぜてない


相馬 「スプーンなんて使ったら、絵柄が崩れるだろ、えーと、ラテアート? っていうのは」

抹莉 「正解ー。ミルク注ぐだけで絵は書けるし、複雑な絵柄だったら爪楊枝とか先の細いもの使ったりするけど、どっちにしろティースプーンなんて大きなものは使わにゃいよ。いやぁでも、スプーン使ってたらアタシも死んじゃってたのかにゃ? ちょびっと飲んだしね。にゃはー、怖い怖い」

逆巻 「どいつもこいつも軽いっつーの!!」

抹莉 「逆巻っちに言われちゃオシマイだにゃー」

由地 「まぁ、そこで実際に死んでもうた多可村に話を戻すとや。あいつが飲んどったんはブラックコーヒーや」

相馬 「……何も入れてないから、ティースプーンは使う必要がなかった。だから、コーヒーに毒は入っていなかったんだな」

逆巻 「って、おい、何の解決にもなってなくね!? 多可村がどうやって毒を盛られたか、全然分かってねーし!!」

相馬 (抹莉じゃないけど、確かにコイツにツッコまれるとイラッとくるな……)
    「進展はあるだろ。シアン化水素酸は、液体の青酸より気化にしくいって話だから、短時間ならそれに浸したスプーンに毒は気化せず付着してただろう。犯人が細工をしたそのティースプーンを、多可村が使った機会があるかどうかを考えればいいんだ」

箱崎 「心当たりのある方は……」


 各々、俯いたり、頭を掻いたり、難しい顔で腕組みをするばかりで沈黙が続く。……頼みの綱の二ノ瀬ですら、だ。


相馬 「覚えて……ないか」

二ノ瀬 「……はい。多可村くんがティースプーンを使用している場面は記憶していません」

美芝 「ブラックコーヒーで、スプーンは使いませんもの……ゴホゴホ、当然ですわ」

白鷺 「…………ブラック、か」

糸依 「んー? 白鷺、なんか心当たりあんのー?」

白鷺 「……いや、そうではないんだが……多可村は、なぜ砂糖もミルクも入れようとしなかったのかと思ってな……」

相馬 「ああ、それは俺も思った。あいつ、どっちもたっぷり使う派だったからな」

逆巻 「見舞いん時も、インスタントのカフェオレ持ってきてくれたしな!」

白鷺 「それが今回に限ってブラックなんて……まるで」

的目 「まるで?」

白鷺 「い、いや……」

抹莉 「まるで、ティースプーン使ったら死んじゃうって、分かってたみたいだにゃー。にゃーんて」


 輪になった面々が、静まり返る。


抹莉 「……あれ、ジョークだったんだけど、もしかしてそれで済まにゃい感じ……?」

鈴木 「済まないよ!」

白鷺 「……いや、そんな、まさか」

逆巻 「え? 何、どゆこと?」

佐田 「私に聞くな。誰か、噛み砕いて説明してくれ」

糸依 「あ、アタシにもお願いー」

長谷部 「バカは黙っててくんないそれができなきゃ鼻と口塞いでこの世から永遠に消滅してほしいんだけど」

相馬 (信じたくないが……自分の思考と向き合って、それでも否定できなければそれは認めなければならない真実なのかもしれない……)




 ロジカルダイブ  PHASE 05


 多可村の趣向は……
 A 辛党
 B 甘党

 砂糖もミルクも入れなかったのは……
 A 砂糖を避けるため
 B ティースプーンを避けるため

 多可村は毒の存在を……
 A 知っていた
 B 知らなかった

 食後の飲み物を用意したのは……
 A 箱崎
 B 堤
 C 多可村

 (正しいと思われるものを選んでください)






 *






 多可村の趣向は……甘党
 砂糖もミルクも入れなかったのは……ティースプーンを避けるため
 多可村は毒の存在を……知っていた
 食後の飲み物を用意したのは……多可村



相馬 「…………分かってたんじゃないか? それも……最初から」

白鷺 「……!」

相馬 「多可村は、箱崎や堤を休ませて自分で食後の飲み物を用意した。ティースプーンも含めてだ。そして甘党なのにもかかわらず、白鷺に注がれたコーヒーに砂糖もミルクも入れなかったのは……自分が用意したそのティースプーンを使うのを避けるため」

的目 「それって……」

相馬 「きっと……多可村はコーヒーなんて飲むつもりはなかったんじゃねぇかな。ジュースでも何でも、スプーンを使わなくて済む飲み物は他にいくらでもある。だけど白鷺が好意で注いでくれて……でもスプーンを使うわけにもいかず、多可村はブラックコーヒーのままそれを飲んでいたんだ」

白鷺 「そんな……」


 決定的な言葉を告げずとも彼女は真実にたどり着いてしまっているようだが――俺はそれを、口にする。
 議論を進めるために。
 信じがたい事実を、曝け出す。


相馬 「ああ……毒をティースプーンに仕掛けたのは……多可村だ」


逆巻 「は……」

鈴木 「え……?」

佐田 「多可村が……」

糸依 「え、え? 何それ? 嘘でしょ?」

長谷部 「……ちっ、俺を殺そうとしやがったのは金髪ノッポかよ……」

黒田 「ティースプーンは誰でも使えたし、長谷部くんだけを狙ってはなかったと思うけど……」

抹莉 「……全員、殺される可能性があったわけねぇ、多可村に」

由地 「夕食パーティ企画したのも、そもそも多可村やしなぁ。計画的無差別殺人っちゅーこと?」

美芝 「ひいいいぃぃ」

白鷺 「……私には……信じられない」

的目 「……白鷺さん」

白鷺 「相馬も知ってるはずだろう? 一日目の夜、皆で夕食のシチューを食べた後、後片付けをしている時に多可村が見せた気弱さを。甘いものを採って、温まって、やっとホッとしたように笑った彼を。そんな彼が殺人など企てるわけがない……!」

由地 「ビビリやったからこそ、やられる前にやってまえーって、事を起こしたんかもしれんけどなぁ」

白鷺 「……っ、煽った人間が何を言う! とにかく、多可村は不安を内に抱え込んでしまうような、優しすぎる男だった……私には、彼が毒を盛ったなどとは考えられない!」

相馬 (……俺だって信じられるかよ……でも、いくら考えてもその答えに辿り着くんなら、認めなきゃしょうがねぇだろ……!)




 議論開始 PHASE 06


白鷺 「相馬の言うことも……筋は通っているかもしれない。だが、決定的な証拠はないだろう?」

逆巻 「決定的な証拠ぉ? あー、例えばどういうのだ?」

白鷺 「……私と相馬がキッチンで見つけたシアン化水素酸。あれを、多可村が使用したという物証はないだろう? 
【指紋を採取したわけでもない】【目撃者がいるわけでもない】のだから」

堤 「俺も箱崎も、料理を作り終えてからはキッチンに入っていないしなぁ……」

抹莉 「指紋採れれば一発にゃのにねぇ」

白鷺 「そもそも……的目」

的目 「……えっ?」

白鷺 「
【武器は全員分回収した】はずだ。多可村も、確か一番最後に……そう、大振りなハサミを。ロッカーにしまったのを確認しただろう?」

的目 「え……ええ、したわ」

白鷺 「その後、ロッカーを開けられた形跡は?」

的目 「……ない」

白鷺 「なら多可村はシロだ。彼はきちんと
【配布された武器であるハサミをしまった】のだから。同じ事が皆にも言える。私たちは皆武器を手放したのだから、あの毒物を仕掛けたのは私たちのではなく、【モノクマの仕業】ではないか?」

的目 「…………」


相馬 (モノクマの仕業……俺たちは全員武器をしまった……本当にそうなんだろうか。なぁ、的目……)






 *






白鷺 「相馬の言うことも……筋は通っているかもしれない。だが、決定的な証拠はないだろう?」

逆巻 「決定的な証拠ぉ? あー、例えばどういうのだ?」

白鷺 「……私と相馬がキッチンで見つけたシアン化水素酸。あれを、多可村が使用したという物証はないだろう? 
【指紋を採取したわけでもない】【目撃者がいるわけでもない】のだから」

堤 「俺も箱崎も、料理を作り終えてからはキッチンに入っていないしなぁ……」

抹莉 「指紋採れれば一発にゃのにねぇ」

白鷺 「そもそも……的目」

的目 「……えっ?」

白鷺 「
【武器は全員分回収した】はずだ。多可村も、確か一番最後に……そう、大振りなハサミを。ロッカーにしまったのを確認しただろう?」

的目 「え……ええ、したわ」

白鷺 「その後、ロッカーを開けられた形跡は?」

的目 「……ない」

白鷺 「なら多可村はシロだ。彼はきちんと
【配布された武器であるハサミをしまった】のだから」


 ←「売店の商品」




相馬 「多可村の持ってきたハサミは……本当にモノクマが配ったものだったんだろうか」

白鷺 「え?」

相馬 「これも状況的な証拠にしかならねぇと思うが……売店から、ある一つの商品がごっそり無くなってたんだ。文具用のハサミと、マグネットタイプのハサミの間の商品だから、やっぱそれもハサミだったんだと思う」

佐田 「つまり、どういうことだ? さっぱり分からんのだが」

抹莉 「老け顔のくせにおバカさんだにゃー。つまり多可村っちがロッカーにしまったのは、ただの売店のハサミだったんじゃにゃいかってハナシ」

的目 「……配られた毒薬を使うために、自分に配られたのはハサミだって嘘をついて、それがバレないように売店の同じ商品を全部持ち去って……」


 自分の推理を口にするたび、的目の表情は暗くなる。
 唇を噛む仕草に悔しさがにじむ。


的目 「それって、つまり……パーティの前どころか、回収の前から、誰かを殺すって決めてたってことじゃない……」

白鷺 「そ、んな……」


 自分のした事は、無駄だった。
 誰かの――多可村の殺意を止められなかった。
 的目がやるせなさに大きな瞳を伏せる一方で、白鷺も整った顔立ちを茫然とさせ、その失意が俺たちに伝播する。

 気付けなかった。クラスメイトの、仲間の中に殺意を抱いた者がいたことに。そして何もできなかった――

 通夜以上に重く湿った空気の中、それをブレイクする無遠慮な声が上がった。


逆巻 「なぁ、あのさぁ」

相馬 「……なんだよ……ハッ、傷、痛むとか」

逆巻 「いやぁ、そうじゃねーんだけどよ…………結局、多可村ってなんで死んだんだ?」

相馬 「…………え」

白鷺 「……あ」

的目 「……それは」

鈴木 「えーと、やっぱ、自分で仕掛けた毒にやられちゃったとか?」

由地 「いやいや、スプーン使うてないし、コーヒーも毒入ってないし、長谷部のコーヒーも飲んどらんし……毒付いた自分の指舐めてしもたとかオチも無いこと無いけど、ビビリな多可村がそない慎重さの欠片もないことするかは疑問やなぁ」

逆巻 「えーーーと……つまり?」

由地 「さっぱり分からんっちゅーこっちゃ」

逆巻 「…………はああ? こんだけ話して、結局それかよ!!」


 多可村はなぜ死んだのか。
 そこから始めた議論で判明したのは、多可村が抱いた殺意だけ。

 結局振り出しに戻ってきてしまったという落胆の中で、俺はただ一人握りしめていた。
 おそらくは学級裁判の展開を大きく変えることになるだろう、ある証拠を――


 学級裁判 中断





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