38. お誘い
俺、今日、何する予定だったっけ……。
思い出しながらぼんやり仰いだのは、入った亀裂から今にも崩れだしそうな灰色の建物群と、それらに挟まれた青空。汚れたビルばかりが建ち並ぶ閑散とした通りの脇で、はひょろりと伸びる街灯にもたれていた。
……ああ、職探しだ。そう、そのつもりで朝から武器達と別れてきたんであって……
座り込むの頭上で、雲がビルからビルへと渡っていく。
泥棒する予定なんて、これっぽっちもなかったはずなんだけどな……。
小箱をポケットに収めた黒髪の男に手招きされるまま、が誰もいないロビーを通り、堂々と正面玄関から銀行を出たのは今から十分ほど前の事だ。
そこで待っていたのは、面食らう程の数の警官達と銃口だった。
こ、この人とは俺、無関係です!
と両手を挙げかけたが、銃達はあっさり下を向いた。どうやら先に保護した行員達から『勇敢にも犯人退治に行った人物が二人いる』とでも聞いていたらしく、素早く駆け寄ってきた警官の一人は、何を疑う様子もなく達にこう尋ねてきた。
「犯人はっ?」
その時の微妙な罪悪感は、ちょっと忘れがたい。
えーと……と口ごもりながらちらりと窺ったのは隣の泥棒。が、彼は「まだ中に」と実に涼しい顔で言ってのけた。それを受けて何やら命令を仰いだ後、行内になだれ込んで行った警官隊を「いや、あの」と更に口をもごもごさせて見送っていると、いきなり襟の後ろをぐんと引っ張られた。
念能力者故なのか、見た目にそぐわず力の強い彼に問答無用で引きずられるまま銀行前を後にして、そして──
辿り着いたこのカラザ市郊外に位置するおんぼろビル街にて、は数々の反省と共に空を見上げているのだった。
……俺って共犯? やっぱ共犯なの? 俺は相変わらず全財産260ジェニーだっていうのにこれってやっぱり共は──
「んっ?」
薄汚れた灰色と鮮やかなブルーしか無かった視界の中で、突然赤い物がきらりと輝いた。疑問符を浮かべながら、逸らしていた首を戻す。
街灯を挟んだ背後に佇んでいる男──いや、ここまで来る途中で名前は聞いた。まずはこちらから試験以来すっかり馴染んだこの名前を言い、そして相手が名乗った名前は──クロロ=ルシルフル。
そのクロロが満足そうに手の中で光らせている物を見て、は血相を変えた。
「な、何してんすか、ちょっと!」
ぬ、盗んだモンを、こんな公共の場で!!
とは言っても人っ子一人見あたらないが、ともかくその輝きを隠そうと跳ね起き、飛びかからん勢いで両腕を伸ばした。が、あっさり避けられて汚い石畳に倒れ込む。それでもめげずに反転すると──
まさにその"盗品"が、何故かこちらに向かって放物線を描いていた。
反射的に手のひらでお椀を作るも、その上で赤い楕円は跳ね返る。銃弾くらい小さくてもきっと値段は数百倍だ。落とすわけにはいかないと追いかけ、追いかけ、どうにか受け止めきったその盗品を、本当ならすぐさま包み隠すはずだった。
だが──そうは、できなかった。
「……水晶っていうから、透明かと思ってた」
数えきれない程のカットによってほとんど滑らかに楕円を形作っているその石は、見かけよりずっと重く、色濃く、その妖しさ含めてまるで何リットルもの血液を凝縮したようだった。
宝石になんて興味はないが、これは、思いのほか──
「やらないぞ」
その声で初めて、魅入ってしまっている事に気が付いた。見ればクロロはしたり顔。
……しまった、共犯街道まっしぐら!
「いっ、いらな」
「念のこと」
宝石を突き返そうとした手は、彼の唐突な言葉一つであっけなく止まってしまった。
「知りたいか?」
豆鉄砲を食った。まさにそんなのリアクションも予想通りだったのか、クロロはにやりと口角を上げた。
「銀行の地下で、あからさまに気圧されていた割に、オレが念能力者かどうかはしっかり確かめてきたな。それは"昨日の知り合い"とやらから聞いた念への興味が頭の多くを占めていたから。だから今もこうしてここにいる、違うか?」
……いや、今ここにいるのは、あんたが引っ張ってきたからだよ。
凄くそう言いたかったが、しかし前半はその通りだった。"念"は今の自分にとって、きっと銃声の次に敏感に耳に留まる言葉だ。
の図星の顔をきっちり肯定と受け取ったらしい念能力者、クロロは街灯に身を落ち着けながらこう言った。
「訊きたい事は?」
「えっ?」
一瞬心が躍ったが、
「え、えーと……」
その後は言葉が続かなかった。ゼロに等しい知識ではその質問を考える事さえ困難だ。うーん、と悩み込んだ末、ふと目に付いたのは正面にいる男の指先だった。
あ、と思い出す。"手伝えば教える"、そういう約束だった。
「そうだ。何て書いてあったんだ? さっきの、壁の」
「ああ、あれか」
思い出したように頷いたその反応に、やはり文章だったのだと確信する。そして興味津々に身を乗り出したに、クロロが浮かべたのは含みのある微笑だった。
「"預かった銃"」
「え?」
驚きつつも、思い出す。銀行強盗から没収した二つの銃。使い手はともかくあれは良い銃だっ……
「"水没させた"」
「……………はあああああッ!!?」
「っていう分かりやすい反応を、読めれば嫌でもすると思ってな」
と続けたクロロの言葉など、飛び跳ねるように立ち上がったの耳に入っているわけもなかった。
「オーラが見えないなんてふざけた嘘にもボロが出る。でもお前はとぼけていたわけではなく本当に凝ができな──」
「す、すす水没ってどういう事っすか水没って!! シーズバレーMM52はともかくCP.S50は古いタイプのリボルバーで水とか砂とかその手のモンにはめっぽう弱いってあんた知らないんすか!? それを水没ってなんて血も涙も無い事ぐぉっ」
怒りをぶつけきらない内に、強制的には石畳と口づけするはめになった。後頭部には誰かさんの足。
「座れ、拳銃マニア。嘘だから」
「う……?」
そ?
「今頃は警察が回収しているはずだ」
少し浮いた足の下から這い出し、何となく正座する。そろりと見上げ、最終確認。
「ホントに水没させて……」
「ない」
……ホッとした。心の底からホッとした。警察に回収されてしまった──それはそれでハートブレイクだが、無事なら良い、元気でいるならそれでいい。
全身の力が抜け、ほろりとつい涙さえ浮かべそうになった所へ降ってきたのは、呆れたような呟きだった。
「妙な奴だ」
だがそれは拳銃の行方に一喜一憂するへのものではなく、クロロの関心はもうとっくに違う所に移っているようだった。
「そんなに綺麗な纏をしていながら、オーラが見えないって言うんだからな」
……キレイって、言われてしまった……。
正座のまま反応に困るの頭から爪先までを、クロロは物珍しそうに眺める。ゆっくりと往復しきったと思えば、
「何か自覚している特殊技能は?」
今度は唐突に身を屈め、ずいっと瞳を寄せてきた。
「昨日まで念の存在を知らなかったと言ったが、知らなくても無意識に能力を形成している例は多々ある。お前はどうだ? 自分には特別な能力があるという自覚はなかったか? 人とは違う、常識を越えた力、性質、現象でもいい、何か心当たりは?」
言葉を重ねるごとに近付くその興味に輝いた表情には、爛々と黒い光を放つ瞳の力も相まって、得も言われぬ迫力があった。
お、俺に訊きたい事は? なんて言って、むしろ色々訊いてんの、そっちじゃん……!
勢いに負けて押されて、思わず後ずさりながら、
「い、いや、ここ一年普通に暮らしてたし……」
逃げるようにそれだけ答えると──そこでクロロはぴたりと止まった。それ以上無理だというくらい彼が身を乗り出し、こちらも後退りしきった時だった。
「一年?」
そう問い返された瞬間、も逃げるのをやめて、あ、と思った。
やべ、口がすべった!
……なんて慌てる程絶対に知られたくない事でもないのだが、かといってこんなさっき会ったような泥棒に気軽に話すような事でもないし──何よりを躊躇させたのは、頭を過ぎった友人の忠告だった。
"個人情報はぺらぺら喋るもんじゃないよ"
ただ、もうこの場は素直に告白せざるを得ないようだった。念を知らなかった時期を生まれてから今までではなく、一年と限定してしまった理由。それを隠したままでは話が先に進まないし、それに──
「その前は?」
探求心に満ちた双眸が、許してくれそうになかった。
「記憶喪失……」
その意味を噛み砕き、そして反芻するように何度も呟きながらクロロは立ち上がった。
「……そうか。記憶喪失」
街灯にもたれ、どこでもない中空を見つめたっきり動かなくなった彼に「あの……」と下から呼びかけても、帰ってくるのは「そうか、それで……」の独り言ばかり。結局止まってしまった話に頭を掻きながら視線を戻すと、はまだ自分が盗品である赤い宝石を握りしめている事に気が付いた。
や、やばいやばい、馴染んで忘れてこのまま持って行ったら俺が捕まるって。
「あの、これ……」
宝石を持つ手と一緒に上を向いたを迎えたのは、いつの間にか独り言をやめてこちらを向いていた、クロロの綺麗な笑顔だった。
「昔、念能力者だった。今は忘れて使えない。そういう事なんだな?」
「え、まぁ……多分」
「使えるように、なりたくは?」
「そりゃ……」
なりたいに決まっている。何しろ人の常識を飛び越えたもの凄い力だと聞いているのだ。その存在を教えてくれた友人は今は忙しいようだが、その内彼に使い方も教わるつもりだと伝えると、クロロはニッと笑って、の目を点にさせた。
「俺なら今すぐだ」
「……は?」
「丁度、予定外に仕事が早く片づいて時間が出来た所だ。どうだ?」
「どうって…」
「気が向いたら来い。ここの三階だ」
「はい?」
ここってどこさ?
と、示された指の先を追っていくと、それは本当にすぐ目の前の建物を指していた。
通りに沿って建つ、薄汚れた灰色の──看板を見る限り、ボロい安宿。わざわざ金を出してまでこんな所に泊まる奴がいるのか、と感想を持っている内に、その玄関扉へ続く階段をクロロは早々と上っていた。
「え、ちょっ……」
あたふたと立ち上がっている間に彼は曇ったガラス扉を押し開け、その姿を中へと消してしまった。
ゆっくりと元に戻るガラス戸が、キィッと音を立てる。唐突に独りになり、呆然とする。
……気が向いたら……ここの三階って……
ゆっくりとボロ宿を見上げた。
つまり、教えてくれるって事か? 念能力を?
つまり、一ヶ月先までおあずけだった物が、今すぐに手に入る……かもしれない?
そう思うと、正直心揺れる物があった。が、はすぐに胸ポケットにしまってあるファミレスのアンケート用紙を思い出した。そうだ、あいにく先約がある。
通りすがりの泥棒より、何倍も大切な友達との先約が、だ。
約束と一緒に、今日の本来の予定も蘇ってきた。一ヶ月後にケータイで連絡を取るためにも、潰してしまった午前の分、これから真面目に職探しをしなければ。
踵を返し、気持ちを新たに街の中心部へ戻ろうとしただったが、
「……あ」
ほとんど固まるように立ち止まり、視線を落とした。
恐る恐る開いた自分の手のひらの上へ。
五階建てのボロ宿に、エレベーターはついていなかった。滑り止めの剥がれかけた階段を上がり、三階フロアに辿り着いたは重く息を吐きながら辺りを見渡した。
……部屋番号、聞いてないんだけど。
しかし、これを持ったままではおちおちバイトも探せない。人に見られないようポケットに突っ込んだ右手の中で、今も罪深い光を放っているのだろう宝石の重さを感じながら廊下を少し進み、角を曲がると一つ、目に留まるドアがあった。
それだけが扉止めによって全開にされている。
しかもドアの脇に窺える、これも開け放たれているクローゼットに黒いスーツジャケットがかかっているのが見え、あ、と思い足を進めた。
「クロロ? ……さん?」
開きっぱなしのドアをノックしてみるも、返事は無い。
しかし、ジャケットの存在を抜きにしても彼はここに居るような気がしていた。銀行の地下……ほどの恐ろしさは感じないが、あの時と似た空気を感じるのだ。
「あの……別に気が向いたわけじゃなくて、これ」
辺りを確認して、ポケットから宝石を取り出す。
「これ、返しに来ただけなんすけど──」
室内の静寂に変わりはない。
もしかすると安宿に見えて、左右に扉を備えた短い廊下の先には、とんでもなく大きな空間が開けているのかもしれない。それこそどこかのスイートばりにリビングの向こうにまた寝室があって、声も届いていないのかも──そう思って奥を窺うように一歩踏み出したのと、その足に何かが絡まったのは同時だった。
あ、と声を出す間も無くそれはの両足を束ね、更にはバランスを失ったの膝に巻き付き、まるで生き物のように這い上がってくる。転倒し、顎を打って、手から赤い宝石がこぼれ落ちた時にはその両腕さえ、何かに押さえ付けられて自由を奪われていた。
そう、"何か"としか言いようがない──なにせ何も見えないのだから。
な、なん、何、何だこりゃー!!?
訳も分からぬまま芋虫状態になったは、床に近くなった視界の中に見た。
「念を教えるとは言ったものの──」
見覚えのある手が、宝石を拾い上げているのを。
「あいにく、"記憶を取り戻す"なんて都合のいい能力は持ち合わせていなくてな」
身をよじって見上げた先で待っていたのは、シャツの胸ポケットに吸い込まれる赤い光と、もう片方の手に開かれている本。それから、口元に綺麗なカーブを描いてこちらを見下ろしているクロロだった。
それが『気が向いたら来い』と言った時の顔とそっくりだと気付いてしまったは、嫌な予感をひしひしと感じながら訊いた。
「……あ、あの……宝石、俺に渡したままだったのって……わざと?」
「しかし一から教えようにも、お前の場合わけが違う。精孔も開いていれば、纏まで出来ているんだからな」
素敵に無視された。
が、思い返せば、ネズミ捕りのチーズの如くおいでおいでと開け放たれていたこのドアはわざとじゃなければ何だと言う? ああっ、俺のバカ!
バタン、とその罠が後ろで閉まったかと思えば、は銀行を後にした時と同じように襟を掴み上げられていた。
「ようするにお前と念能力者との違いは、"自覚が無い"、その一点だ。だから」
そのまま奥へ、ずるずると引きずられていく。
「自覚せざるを得ない状況を与えてみる事にした」
最後に一蹴り入れられて、少し開けたスペースに転がされた。勢い余って何かの角に膝をぶつけたが、その痛みなんかより、蹴られる直前のクロロの言葉の方が気に掛かって仕方なかった。どう考えても、不穏な発言だ。
自覚せざるを得ない状況? ……そ、それって──?
「なに、すぐに放してやるさ」
クロロは指差す代わりに、こちらへと本を軽く動かした。
「今お前を拘束している物。それが何か、分かったらな」
「……」
それだけ? と一瞬思った。が、いやはや大きな間違いだ。マチの時もシャルの時も、何も見えずにポケーッとしてたのは一体どこのどいつだ?
「……もし、分かんなかったら?」
「一生そのままだな」
「なっ……! んな事言われても! 俺には、念なんてもんは見え」
「もう1時か。少し出てくる」
「ないってさっきも言って──……へ?」
見上げたクロロは袖口をわずかにめくり、そこに巻き付く腕時計に目をやっていた。袖を戻すと、本を片手に開いたまま彼は踵を返す。ドアに向かって歩き出す。
出てくる、って、嘘だろっ?
「ちょっ!」
焦ってまた膝をぶつけたが気にしていられない。
「ちょっと、待っ……! このまま置いてく気かよ!?」
がむしゃらに暴れながらそう叫ぶと、クロロは立ち止まり、振り返ってくれた。が、ドアノブを掴んで押し開ける彼は、何て無い表情でただ一言こう言っただけだった。
「むやみに動くと死ぬぞ」
あまりに突然の宣告に、頭も身体も停止した。
死ぬ?
死ぬって……何だ?
ひくっ、と顔の筋肉がわずかに引きつる。全身を縛る不可視の物体。それについて色々と嫌な想像が沸き上がり始めたその時、ふと、の鼻に焦げ臭さが匂った。
つられて床に目を落としてみると──ちょうど、ジュウッ、と音を立てて、安っぽいカーペットもろともフローリングの床が"何か"に焼かれ、溶かされているところだった。
「その内戻る。死体で出迎えるなよ」
クロロの笑えないセリフを聞かずとも、この状況を理解しきるには十分だった。
正直、通りすがりの記憶喪失者に無理矢理念を教えるこの男が、何を考えているかなんて根本的な事は甚だ分かりかねたが、それでもこれだけは、自分の身に迫るこの真実だけははっきりと理解した。
本気で取り組まなきゃ──
死ぬ。
「は、はーい! はい! 分かった!!」
閉まりゆくドアに向かって、挙手の出来ないは渾身の力で叫んだ。
「ロープ、ロープだろ! いや、紐? 鎖? ああっ鞭か!? はっ、生き物? ……ヘビ、そうだ毒ヘビだ! えーと他、他は…っ!!」
「不正解」
ガチャン、と扉は無情に閉じられた。
その後も、まだ近くにいる事を祈って思いつく限りの"長い物"を叫んでみたが……息もネタも切れた。叫び終わってみれば従業員の存在すら感じない程静かなホテルだ、もうクロロもいないだろう。
冗談だろ、冗談……。
さっきよりも腕や足にきつく食い込んでいるように感じる"何か"ごと、脱力して仰向けに転がった。
部屋は安宿の看板通り狭かった。一本足のテーブルと四脚椅子、それらと同じくらいの高さの棚、どうやらさっき膝をぶつけたのはこの角らしい固そうなベッド。目に付く調度品はそれくらいの物で、他には扉も何も──
「うわあっつ──!!」
自分に巻き付いた現実から逃避しかかっていたを、当のそれが引き戻した。
そりゃあ何せ見えないので確証は無いが、ニット帽を、銀髪を、そして耳のはじっこを焼き溶かせる危険物なんて、コイツの他には思い当たらない!
熱さにもんどりうった勢いでテーブルを倒し、きつさを増した拘束に悲鳴を上げる身体を棚に打ちつけ、反動で戻った際には椅子を蹴り飛ばす。バッタンガッタンと暴れる音をどこか遠くに聞きながら、まとわりつく激痛にぐっと細めた涙目ではぼやけた天井を仰いだ。
……マジで、死ぬ?
……こんなとこで?
……冗談じゃ……
「……冗談じゃねーぞあの野郎!! ふざけんなッ!! 武器預けっぱなしで死ねるかあああーッ!!」
無論この渾身の叫びも、彼に届いているはずはない。
が、その代わり。"身を締め付ける何か"としか捉えていなかったものに一瞬、針のような、棘のような感触を明確に感じた──……気がした。
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それって監禁。
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